取り立ててDavid Bowieのファンという訳ではない。
彼の音楽やパフォーマンス、ファッションや言動などが、ある種の文化的イコンとして扱われることにも関心を持ったことはない。
彼がバイセクシャルだということにも、日本映画に出ていたことにも、ヴィジュアル系の元祖と言われることがあることにも、興味が沸かない。
しかし、好きな曲はある。その一つが "Lady Stardust" だ。
この曲を何度か耳にした憶えはあったが、最初から終わりまでを通して聴いたのはリリースされて数十年経った頃、ラジオから偶然流れてきたのだった。
アルバム "ジギー・スターダスト(The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars)" がリリースされた頃の雰囲気なんか何も知らない。Ziggyというキャラクターも、そのストーリーも当時はまったく知らない。この曲を唄っている彼の姿すら見たこともなかった。
それでもこの曲は美しかった。
"And he was alright"
ちっとも大丈夫そうじゃない。哀しくて、何かから逃れたがっているようだ。それなのに妖しく不遜な表情で高音を発している姿が目に浮かぶ。
そうやってボウイがいつまでも旅を続ける様を俺は勝手に思い浮かべていた。
この曲を聴いていた頃、俺は孤独だった。誰かといても、ひとりの時も。心は石のように何も感じず、その代わりに強靭だと思っていた。
だがこの曲は、孤高や強さと同時に、俺に自分の心の脆さを感じさせた。抑え込んだ哀しみの端っこを掴まれたようだった。
今でもLady Stardustを聴けば当時の感覚が甦る。そして今も俺は矛盾を抱えて生きる。
音楽の不思議。
遠い世界からデヴィッド・ボウイがくれた一曲。
ジギー・スターダスト<2012リマスター>
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