年末で時間がありません。が、あまりにも気になってしまったので急ぎ書きます。BuzzFeedで昨日公開されたジョイフル経営者穴見議員に関する記事へのブックマーク、コメントに感じた違和感について書きます。
- 穴見議員とジョイフルを礼賛するブコメ
- 穴見議員が社長を務めるジョイフルはブラックを脱したのか。
- 労災に対する見解を明らかにしないまま穴見議員賞賛に誘導
- ブクマ・ブコメの不自然さ
- はてな互助会など他愛がないと思えた
- 人工的な世論の萌芽を警戒
穴見議員とジョイフルを礼賛するブコメ
昨日公開されたBuzzFeedの次の記事。多数のブックマークを集めてホットエントリとなっており、現在も政治・経済カテゴリではトップに表示されています。
ブックマーク数もさることながら、気になったのはブコメの内容。ほとんどが、穴見議員礼賛やジョイフル応援的なもの。逐一のものにリンクはらないので、関心のある方はブクマのコメント欄を見てください。
はてなブックマーク - ファミレス経営の国会議員が法規制にこだわる理由(小林明子 BuzzFeed)
穴見議員が社長を務めるジョイフルはブラックを脱したのか。
もちろん長時間労働を無くしていくべきですし、そのために法規制によって業界内の競争条件を揃えることで、ブラック労働を競争力の源泉とするような企業を根絶していくべき、という記事の大まかな趣旨には賛同できます*1。
しかし、この記事を読んで、ブコメが穴見議員やジョイフルを礼賛するブコメ一色になるのがどうも理解できません。
このBuzzFeedの記事の中でも、穴見議員がジョイフルの社長となってから10年程度経ってからも、ジョイフルがブラック企業のままであるのでは?と疑わせるような記述があります。
それでも2012年、元店長の女性(当時30代)が、長時間労働やパワハラでうつ病になったとして慰謝料などを求める訴えを起こす(和解成立)。15年11月には元店長の男性(当時38歳)が、心疾患を発症したのは長時間の過重労働が原因だとして、約8100万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴し、係争中だ。「ブラック企業」の汚名は長くつきまとう。
この一文において「「ブラック企業」の汚名は長くつきまとう。」という表現は、あたかも今はブラック企業などではないのに、不当にブラック企業の汚名を着せられているように見えなくもありません。
しかし、例えば上に挙げられている元店長の男性が心臓の痙攣(心室細動)で倒れ、一時心肺停止状態になったのは2013年7月。発症前の3ヶ月間は1日も休みを取れず、月平均の残業は127時間であったとのことです。もちろん、損害賠償請求の当否等について直ちに判断はできませんが、少なくとも2014年10月には労働基準監督署によって労災認定基準を上回る時間外労働があったとして労災認定されているという事実だけは確かです。
その後の元店長の訴訟提起について、社長である穴見議員本人のコメントを私は発見することができませんでしたが、次のような記事もあります。
このソースをどれくらい信用するかはさておき、BuzzFeedの記事は、穴見議員のコメントを中心に構成されているのだから、ほんの数年前にジョイフルにおいて異常な長時間労働による労災が発生し、公的にも認定されていることについて、穴見議員からのコメントをとらないということが私には考えられません。
記事では、2003年に社長に就任して以来、社内改革を進めてホワイト企業を目指してきたようにも読めますが、その10年後においても重大な労災が発生するまで異常な労働時間が放置されていた事実からすれば、仮に真剣にホワイト化を目指していたのだとしてもその取り組みは全く不十分であると言えます。
あるいは、この記事からは、いくらホワイト化に取り組もうとしても、業界内にブラックが蔓延っている以上、一社だけブラックから抜け出すことは競争原理の中では不可能である、ということを前提にして、ジョイフルがいまだにブラックであったとしても免罪されるべきように読める部分もあります。
ジョイフルの労働環境について、ネットで検索すれば今現在でも多数のネガティブなものが見つかるのですが、それが正確な情報であるかどうかを私が判断する能力はありません。しかし、少なくとも、社長就任10年後にも長時間労働(3ヶ月も休日がないという驚くべき状況)によって重大な労災が発生しているような企業の経営者が、「働かせすぎは人権侵害だ」などと正論を言ったとしても、それは完全な「お前が言うな」案件である可能性も十分あるのではないかと思えます。
労災に対する見解を明らかにしないまま穴見議員賞賛に誘導
さらに、勘ぐり過ぎかも知れませんが、この記事にはジョイフルの写真が一枚もありません。店舗の写真は吉野家・ジョナサン・ローソンで、もちろん 「写真と本文は関係ありません」となっていますが、私は違和感を感じました。素材の問題だけじゃないのか?という向きもありますが、社長である穴見議員に話を聞いているのですから、ジョイフル側から写真の提供を受けることも出来るはずです。「働かせすぎは人権侵害だ」という表題に関連して他社の写真を使用し、当のジョイフルの写真が一枚もないことに不自然さを感じます。特別な意図がないとしても、他の企業への配慮が不足し過ぎている反面、ジョイフルへの配慮は非常に慎重に行われているように感じなくもありません。もちろん、勘ぐり過ぎかも知れないのですが。
さらに、記事は、先ほど引用した労働裁判の記述の後には、これを受けて会社側がどのような対応をしたのかという肝心な部分に関する記述はなく、一社だけではブラックは改善できない、法律がないからダメなんだ、そして穴見議員はルールメイキングによって国民の生命を守るために議員になったのだ、という流れになっています。そもそも、記事の表題が問題そのものよりも議員個人に焦点をあてた表現になっていますし。
ブクマ・ブコメの不自然さ
BuzzFeedの記事が巧妙に穴見議員賞賛に誘導するように作られているので、ブコメにそのようなものが一定程度現れることは無理もないことだとは思うのですが、それにしてもブコメは穴見議員個人を讃えるようなもの、ジョイフル自体も褒めたり応援したりするようなもので埋められています。別に褒めるのは自由なのですが、それにしても記事との対応で個人・企業の礼賛がここまで埋まるのは、はてなにおいては殆ど見たことがありません。
違和感を感じて無言ブコメも含めてユーザーの他のブクマを見たりしましたが、違和感を強化するようなものが一定数以上散見されました。これについては単なる言いがかりレベルにもなりかねないので詳述しませんが、一定の一斉動員があったのではないか、と思える部分すらあります。とはいえ、それは「思える」というだけで、私の言いがかり、単なる妄想の可能性もあるのですが。
いずれにせよ、これだけブクマを集めたBuzzFeedの記事であれば、ジョイフルや穴見社長・議員に関する検索をかけた時に、過去の労働裁判に関する記事などよりもこの記事が上位にあがる可能性はあります。もちろん、検索順位に過ぎず、それぞれの事実の真偽はユーザーそれぞれが判断するものなので、これもまあ好きにしろ、という話ではありますが、そういうユーザーばかりではないので、事実上の影響はかなり大きいかも知れません。
はてな互助会など他愛がないと思えた
私はブログ、ブックマーク含め、はてな歴は1年に過ぎませんが、基本的にはてなは好きです。みんながどんなものに関心を持っているのか、共感できる意見があったり、異なる意見や真向から対立するような意見も含め、色々見られるのは、「気づき」があったり、自分の考えを深めたり自省したりできるきっかけをくれます。しかも、100字という制限の中で基本的に一度きりのブコメでそれぞれの考えが表現されている淡泊さもちょうどよく感じます。またそれぞれの価値観のあり方とは別に、相対的にユーザーのリテラシーの平均値が高いと感じる部分もあります。
私は事情に詳しくありませんが「互助会」なるものによってホットエントリにノイズが入ることを厳しく批判する人もいます。その気持ちもわかるのですが、私は「互助会」などはカワイイものだと感じます。互助会と読者同士の相互ブクマの境界線は難しいこともあるし、ホットエントリに現れたノイズに過ぎず、記事そのものやブコメを数秒見るだけそうだとわかるのでそんなに苦にもなりません。さらに、アクセスアップの目的以外においては没価値的な繋がりであれば、一瞬のバズや少しの検索優位につながるとしても*2、ノイズとして邪魔ということを除けばそれ程社会全体に与える害悪はないのかな?などとも思います。
いずれにせよ私自身は滅多にホットエントリ入りしない辺境ブロガーで、普段は互助会的な話題にはほとんど関心がないのですが、今回のこの記事のブコメを見ていて、「ああ、互助会問題って結構話題になるけど、そんなものは本当に他愛のないレベルなのかも知れないな、もっと恐ろしいものもあるのかも」、と思ったのでした。まあ、私の妄想かも知れませんが。
人工的な世論の萌芽を警戒
この記事の表題に「はてなブックマークの」とは書いたものの、この問題は他のツールにおいても言えることでしょう。ある物語があり、その物語の真偽や本来の論点とは別に、一定の価値観や、特定の人物や企業の評判を大きく左右するために、意図的組織的な動員が行われる可能性はどこにでもあるでしょう。しかもそういうことに非常に熱心で、組織だって統率の取れている勢力もある。
今回の件がそれにぴったり当てはまると断言する気はありません。もし仮にそうだとしても、例えばはてなの利用規約などに違反しているとは言えないのでしょう。もちろん、普通にブックマークし、コメントを書いている人たちが一定程度いることもわかりますので、このような記事を書くのはその人たちに申し訳ない気持ちもあります。すみません。
それに色々とネガティブな情報・事実を確認した上で、それでも議員や企業を礼賛するというのであれば、それはそれで当然自由ですし。
ただ、ブックマーク数やブコメの集合が、ある一定の意図によって人工的に作られる可能性があるとすれば、それは単なる「ノイズ」では済まされないよな、と思います。下手したら大勢に飲み込まれて自分もそれに加担することになるかも知れません。
はてなブックマークは便利で良くできたツールではあるけれど、それはユーザーが個々に独立しているからこそのもの。とすれば、やはり直接自分で記事にあたり、疑問に思えば自分で調べてみる、なんていう基本の部分は外せないよなあ、と思ったのでした。
自戒を込めて。
※ 約30分で書いたので、後日大幅に加筆修正する可能性があります。
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