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45 For Trash

しごうするのか、されるのか。

DHCやアパホテルに舐められる消費者。

東京MXテレビで放映された「沖縄ヘイト」とも言うべき番組「ニュース女子」のスポンサーで制作会社の親会社でもある株式会社DHC。グループ代表が著した南京大虐殺を否定する本をホテル客室に置いているホテル大手のアパグループ。両社とも、一部にはその行為を賞賛する意見があるもののそれは少数で、多くの場合批判的に語られ、また抗議が集まっているようです。

これらの問題について語るべきことは色々ありますが、今日は、これらの企業や企業代表者の行為と消費者の行動について少し書こうと思います。

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Photo credit: SarahDeer via Visualhunt / CC BY

いずれも一般消費者向けの事業会社

それぞれの問題は、放送の場で起きたことであるか、ビジネス本体であるサービスの場で起きていることであるかに違いはあるものの、いずれも企業代表個人の思想の流布を企業の看板を掲げた場で行っていることに共通性があります。

DHCは主に化粧品や健康食品を製造販売する一般消費者向けの事業を行っており、アパグループもビジネスホテルを中心とした事業展開で一般消費者向けの事業を行っているという点も共通しています。

常識的に考えれば、化粧品の品質やホテルの施設やサービス品質と、政治的立場・思想や歴史に対する認識には関連性はありません。ですから、特定の思想や政治的立場を流布すること自体は、これら企業にとって取り立ててプラスはないはずです*1

むしろ、その思想や政治的立場が極端なものである場合には、それを表明することで一般消費者に悪印象を与え、ビジネスにも悪影響がある、と考える場合も多いと思います。厳密に言えば、この社会に生きている以上、誰も「政治的」であることから避けられない*2でしょうし、少なくとも社内における他者からのプレッシャーの少ない経営者であれば、一般労働者に比べて大っぴらに自分の思想や政治的立場を表明することもできるでしょう。それでも多くの一般消費者向けの事業会社の経営者は、明らかに多くの消費者が嫌悪感を感じる可能性のある考えを大っぴらに表明することを避ける方が多いと思います。

しかし、DHC、アパグループいずれの代表も、自分自身の政治的立場を、自らの顧客に明らかにわかるように表明しています。いやむしろ、顧客に対して直接に、自身の思想や立場を喧伝し、賛同させ、浸透させようとしているように見えます。これはどういうことなのでしょう。

少数派であるという認識がない可能性?

沖縄の沖縄米軍北部訓練場、高江の米軍ヘリパッド建設に反対する市民を「テロリスト」であるとか、外国人や外国政府に雇われている人たちだとかいう言説を、日本国民の大多数が信じているとは思えません。もちろん、沖縄の米軍基地に関する政治的な意見には多様なものがあり、また本土には沖縄への無関心も垣間見られます。それでも、さすがに基地反対運動に参加している人々を「テロリスト」であるとか外国の手先である、というような言説をまともに信じている人は、そう多くはないでしょう。沖縄の米軍基地について現状肯定派の人であっても、本心でこのような話を信じている人はごくごくわずかでしょう*3。また、南京大虐殺についても、その歴史的事実についての認識に人によって幅はあるでしょうが、南京大虐殺を全否定するような言説に与する人がそう多くはないはずです*4

ですから、このような言説をすれば、一般消費者が不快に感じたり反発を感じたりすることは容易に想像できそうです。自分自身の持つ考え方の正しさをどう評価するか、とは別に、他者は自分の考え方に接してどう感じそうか、自分はどう見られそうか、ということは普通ある程度は予想できるものです。

ただ、例えばワンマン経営者、自分の企業内において他の誰もが自分に追随するような環境にある人は、周囲にイエスマンしかおらず、その環境で年月を経る中で常に自分は正しく、他者から評価されるべきもの、という認識になってしまっている可能性も皆無ではありません。外部との関係でも、背景にビジネスがあれば、正直な反応に接することは難しいでしょうし。

それでも、自分の直接の観測範囲外において、人々がどのように考えていそうか、世の中の大勢はどのように考えていそうか、については認識できるはずです*5

あるいは、他人が不快になるような言説をしても大丈夫だ、問題ない、という情勢把握というものがある可能性もあります。例えば、政治権力が自分の思想・立場と非常に親和性が高いとか、重なっているとか、そういう情勢把握の中にあれば、文句を言う人がたくさんいても、権力的に黙らせるとか押し切ってしまうということが出来ると思うかも知れません。

しかし、一般消費者向けに事業を行っている経営者であれば、最低でも自らの思想・立場が彼ら消費者から見てどのように見えるかぐらいは認識できるだろうと思います。くり返しますが、その思想・立場が正しいかどうかという評価とは別に、事実の問題として多数の消費者がどう感じそうか、ということです。

ビジネスにマイナスの影響などないことを知っている

これらを前提にすれば、DHCやアパグループの代表は、一部賛同する人がいるとしても、消費者の大多数が彼らの主張を快く迎えてくれるとは思っていないにもかかわらず、会社の看板を掲げてその立場・思想を大声で叫んでいるわけです。

これは何を意味しているのでしょう。彼らは彼らのビジネスなんてどうでも良いと思っているのでしょうか。

そんなはずはないはずです。自分が手塩にかけた事業に思い入れがないはずないし、もちろん、彼らの経済的利益にも直接関係があります。既に大成功を収めていたとしても今後事業が傾くようなことを望んでいるはずはありません。

とすれば、彼らは、消費者の多くが自分の主張に眉をひそめ、一部の人間があからさまに批判をしてきたとしても、あるいはメディアに取り上げられて叩かれたとしても、自分たちのビジネスに大したマイナスの影響などない、と思っているのです。

大した自信です。これを見て、一部の支持者たちは「あっぱれ」「よくやった」「勇気がある」と賞賛するかも知れません。確かに大したものです。ビジネス上の損失になる可能性をおしてまで、極端な思想を大声で叫ぶのですから*6

しかし、彼らは経験のある経営者です。

知っているのです。いくら批判が集まろうと、メディアに叩かれようと、擁護してくれるのが一部の極端な勢力やおかしなメディアだけだと知っていても、ビジネスに大したマイナスなどないことを。自らの経験や、他の事例を横目で見ながら、きちんと学習した上でやっているのです。馬鹿じゃないんですから。

つまり、この問題が取り上げられ、一時的に騒がれたとしても、DHCの化粧品は売れ続け、アパホテルの稼働率は下がらないことを、ちゃんと知っているのです。

消費者は完全に舐められている

それは何故でしょう。

それは、この問題に接して不愉快に思ったり、批判的な意見を持った消費者であっても、価格や機能から気に入った化粧品であればそれを購入し続け、立地や価格、設備等から最も丁度良いホテルだと判断すればアパホテルに宿泊するからです。

もちろん、一部の人たちは、今回の問題を受けてDHCの商品の購入はやめようと考えたり、アパホテルに泊まるのを止そう考えるかも知れません。しかし、そういう人は恐らく現状ではほんの一部でしょう。この問題に触れ、多少の関心を持ち、多少不愉快に感じた人の多くは、そのうちこれをすぐに忘れ、あるいは覚えていても大した問題ではない、とこれらの商品、サービスを選ぶことでしょう。こういう人たちにとって、沖縄の人々がヘイトにさらされようと、南京大虐殺を否定して日本の歴史が書き換えられても、少し不愉快には思うけれど、すぐにどっちでも良くなる事柄なのです。つまり当事者ではない。

DHCやアパグループの経営者は、ちゃんとわかっています。消費者は、大衆は、目の前に問題をつきつけられると不愉快な顔をするけれど、そうでなければそのうちどうでもよくなり、その行動に何の影響も与えないことを。

彼らは、自分の経営する企業の資力や看板を利用して、自分の思想を流布しようとします。いや、彼らは、「お前たちの知らないこと、理解していないこと、勘違いしていることを教えてやる」という上からの目線で国民を「啓蒙」しようとしている。消費者は大衆は馬鹿であり、自分が啓蒙しなくてはいけない対象である、そのためには自分の得た財力や権力を有効に利用しよう、そういう発想です。

つまり、消費者はDHCやアパホテルの経営者に舐められているのです。一時的に反発があっても、一部は自分たちから離れて行っても、大多数の消費者は変わらぬ消費行動を取り続けるだろうと。その大多数が多少の不快感を持ったとしてもビジネスに影響などないと。

商品選択の自由を駆使し、商品利用=企業の思想の肯定だという常識を作る

DHCやアパグループの代表は、消費者を試しているとも言えます。DHCについては放送法やBPOの範囲にあり政治的公平を害したり事実に反する報道を行うべきでない東京MXテレビを通しての行為なので、別に考えるべき問題はありますが、それはどちらかというと主に東京MXテレビ側の問題です。アパホテルは自らの営業行為内で代表の見解を流布しようとしているに過ぎません。もちろん、ヘイトスピーチは許されない、という別次元の問題は避けて通れませんが、問題を単純化するために一旦それを置くと、政治的見解をどう述べようと自由だとも言えます*7

この自らの好き勝手にやっている行動を通じて、いわば彼らは闘いを挑んでいるのです。彼らの主張、彼らの思想、彼らの政治的立場に異議を唱える人たちに対して、喧嘩を売っています。自分の企業の資力、看板、施設、従業員を利用して、しかし多少のリスクも負いながら。

放送局に多額の金を投入して下僕にした上でヘイトスピーチを垂れ流す番組を放映すること、全国の利便性の高い場所にある多数の客室にまるで聖書のように自著を置いて歴史を書き換えようとすること、これらを批判したいなら、消費者は消費者で自分たちに出来ることをしてこれに対抗するしかありません。

我々は消費者です。消費者には商品を選択する自由があります。彼らの提供する商品やサービスは他でも代替が効くものです*8。今まで利用してきた商品、サービスであってもそれを切り替える自由は当然消費者にあります。

商品選択の理由が、その商品自体の品質の問題であろうと、企業に対するイメージの問題であろうと、あるいはまったく別の理由であろうと、誰かに責められる言われはありません。我々は良くも悪くも資本主義社会に生きているのですから。

アパホテルが歴史修正本があるのが不愉快なら、アパホテルを使わなければいい。逆にアパホテルを使う人は南京大虐殺を否定しているんだなと思えばいい。アパホテルから出てくる人がいたら、「ああ、この人は今、南京大虐殺否定に浸ってきたのだな」と白い目で見ればいい。それは自由です。一方でアパホテルを利用するのも自由。アパホテルには南京大虐殺を否定することに賛同している人が宿泊するのだろう、というのが常識になれば、そう思われることを承知で宿泊する人にとって何の問題もないはずです。

沖縄ヘイトをはじめとする偏見やデマを流すDHCの代表の姿勢がいやならば、DHCの商品を買わなければいい。DHCの商品を使っている人がいれば、ああ、この人はヘイトを肯定しているんだな、と白い目で見ればいい。それは自由です。一方でDHCを利用するも自由。DHCの商品を使うのは、沖縄で基地に反対する人たちのことをテロリストだと断じている人なんだな、というのが常識になれば、そう思われることを承知でDHCの商品を使っている人にとって何の問題でもないはずです。

なんなら、歴史修正主義だとか、ヘイトスピーチだとか、デマだとか、そういう言葉を使わなくてもいい。もっと具体的に、「南京大虐殺はなかった」と思うのですね?「沖縄の米軍基地反対の人たちはテロリストで外国の手先だ」と思うのですね?と評価を加えずに言ってもいい。であれば、DHCやアパグループの代表にとっては何の問題もないはず、望むところであるはずです。彼らが正しいと思っている事柄を、正しいと賛同する人が、彼らの商品を使い、彼らのサービスを買うのなら、それは理想的なことではないでしょうか。

であれば、DHCやアパホテルの行為を批判する人たちにできることは、「DHC商品購入者=沖縄米軍基地反対者はテロリスト・外国の手先だと思っている人」「アパホテル宿泊者=南京大虐殺否定者」を常識にしていくことです。この二社の代表者はそれぞれの主張が正しいと信じているのだから、その主張に沿う人たちばかりが顧客になれば今よりもっと幸福になれるでしょう。

単純に「買うな」「泊まるな」という話ではありません。彼らの主張が正しいと思えば購入・宿泊すればいい、そうでなければ絶対購入も宿泊もしない、そういった住み分けをしましょう、という話です。そしてそれは彼らの思想にも適っている。誰一人困らない正当な主張です*9。消費者としての普通の選択と言ってもいい。彼らは反対意見に耳を傾けず、単に決めつけ、押し付け、乱暴に教えつけてやるという態度なのですから、議論の余地はない。住み分けるしかないのです。彼らの主張に賛同する人だけでビジネスが続くかは経営者が勝手に考えればいい。*10

しかし、日本の消費者にそれが出来るでしょうか。これまでの例で言えば難しいでしょう。でも、自分はこれらの商品・サービスを絶対利用しない、そして周りに「DHC商品購入者=沖縄米軍基地反対者はテロリストだと思っている人」「アパホテル宿泊者=南京大虐殺否定者」だよね、と言ってまわれば良いだけです。家族にしか話せない人には家族に、友人にも話せる人なら友人に、会社で宿泊手配してもらう時に言えるならそれも。本当に、これらの問題を他人事だと思わないなら、そう難しいことではないはずです。

少しだけ思い出せば良いのです。あなたがどんな政治的立場にいようとも、基地に不安を感じる人たちが真剣に抗議しているものを「テロリスト」と呼ぶことは正当ではなく、そこに生きる現実の人々にどんな苦しみを与えるのかということを。あなたが南京大虐殺に対して常識的な認識の幅の中にいるのなら、過去の暗い歴史を全否定し自分たちの足元を不当に美化すれば、自分たちの祖先にも他国の犠牲者にも、そして未来の子孫にも顔向けできないだろうということを。

しかし、もし我々消費者が舐められ続け、売られた喧嘩をへらへらとやりすごすのなら、私たちのまわりには気づけば第二、第三のDHCやアパホテルが蔓延ることになるでしょう。そういう抜き差しならない情勢だと私は思っています。

私たちはこれらの企業代表者に闘いを仕掛けられている。評論していればよい外部者、第三者ではない。まさに我々消費者こそ当事者である、と私は思います。

余談:アドセンスの広告をブロック

このサイトではグーグルアドセンスの広告を掲載していますが、DHCやアパグループの広告が表示されないように、アドセンスの「広告の許可とブロック」→「広告主のURL」でこれら企業のドメインをブロック指定しました。この記事にはこれら企業のキーワードが多数入っているので広告が掲載されたらイヤだし、他のページでもこれら企業の広告を掲載するのは一切イヤだからです。これらの企業が広告掲出しているかどうかは確認できていないのですが。それでも出てくるようならその都度対処しようと思います。

※先日こんな記事も書いています。

www.shigo45.com


This is a post from 45 For Trash

*1:もちろん、一定の政治的立場や思想、あるいは金銭的援助によって、特定の政治勢力を応援することで、大きな権益を得られる可能性は皆無ではないでしょうが、ここでは本筋から外れるので無視します。

*2:自分が意識するかどうかに関わらず。

*3:ネット上では拡声されて大きく見えることもありますが。

*4:これについてもまた極端な歴史修正的見解はネット上では拡声されがちですが。

*5:中にはそれさえわからない人もいるかも知れません。しかしそこまで知性が低いと断じるのは失礼でしょう。

*6:あえてやっているのではなく、ただ衝動として抑えきれないだけかも知れませんが、だとすれば私の理解を超えています。

*7:もちろん実質問題としては、企業活動としてそれを行えば、その企業従業員の思想・良心の自由と衝突する場面は考えられますが。

*8:ただ、化粧品や健康食品の品質や効能について、他に替えられないほどのものがあるかどうか、私には判断できませんが、今のご時世であれば代替できるものはあるのではないでしょうか?

*9:いや、万が一にもこの行動が奏功するなら各企業の従業員の方々は困る可能性もあります。従業員の方々はヘイトや歴史修正主義を流布する片棒を強制的に負わされているとも言えますし、積極的に加担している人も中にはいるかも知れませんが、いずれにしても難しい立場でしょう。この騒動に正直ただただ迷惑しているかも知れません。それは申し訳ないと思います。

*10:むしろ、そういう人たち対象に特化して商売してもらえれば平和だとも思うのですが。

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