45 For Trash

しごうするのか、されるのか。

帰省はいつも。

先日、実家に一人で帰省してきました。お盆は仕事のために帰れず、他の家族ともうまくスケジュールが合わないのです。

車で片道6時間半ぐらい。高速道路を走るのは好きです。運転に気をつかわなければならない一方、物思いをする余裕もあるという、あの程よい感じが良いのでしょう。その代わりに、車を降りた途端に何を考えていたのかは忘れてしまいます。

実家には年老いた両親が二人で暮らしています。以前は、結婚した姉が近くに住んでいたのですが、数年前に亡くなってしまいました。二人とも多少の不具合は抱えつつも健康状態は良好です。ただ、体力も判断力も低下していっていることは否めません。以前このブログでも書きましたが、両親が振り込め詐欺被害に遭いそうになってからは、毎日一度、母の携帯に電話をしています。

私は親不孝者だと思います。14,5歳ぐらいの頃から、私のことでは何一つ両親の思い通りになったことはないでしょう。いつも親の想像しない行動や選択をし、堅物の両親や姉からは信じられないような「問題行動」も多々ありました。10代で上京してからはずっと実家から遠く離れて暮らし、時には数年にわたって音信不通だったこともあります。思えば別れ際にいつも母が、「悪いことをするなよ」と言いました。今でも言われます。大した悪事など働いたことはないのですが。そう言えば、高校生の頃は、祖母と叔父にも会うたびに同じことを言われていました。

ある程度落ち着いてからは、実家には年に2、3回電話をし、何年かに一度帰省するぐらいでした。ただ、姉が亡くなると、年に最低でも2回帰省し、電話も頻繁にするようになりました。先に書いたように今では毎日欠かさず電話をし、お盆や正月以外にも時間がある時は帰省するようにしています。

電話では、私が「今日は時間があまりない」と言わない限り、母が10分から20分程度勝手に喋っています。だいたいは朝起きて何をしたとか、何を買い物したとか、何を食べたとか、そんな話です。時には、親戚の話やら父の愚痴やらを一方的に喋り続けます。私はただ相槌を打っています。いずれも私にはほとんど関心が持てない話題で、過去に何万回聞いたかわからない話が多いのですが、ただただ聞いています。時には、その日の冒頭で話した話題に戻ってしまうこともありますが、私は指摘もせずにひたすら相槌を打つことに専念です。年に数回、母が姉のことを話し続ける日があります。その時の会話は時間無制限です。昔から無口な父は、私が指名しない限り電話口に出ることはありません。

毎日話しているので、帰省しても久しぶりに会った気はしません。しかし、それでも声で聞くよりも老いが進んでいることに気づきます。目も耳も以前よりは効かなくなってきて、几帳面な母の掃除が行き届いていないところが増えたことに気づいては毎回少し驚くのです。

実家に着いたら、まず庭の雑草を抜きます。次はデッキブラシとホースでベランダやポーチの掃除です。その後トイレの掃除をし、浴室の掃除をします。毎回浴槽のエプロンを外すなど、普段手が届かないところが特に大事です。子供の頃、私は家の手伝いをする子どもではありませんでした。母は、私が実家の掃除をするたびに「いつからそんなことするようになったの?」と驚きながら笑っています。前回も掃除したのに。無口な父がやってきて、あまり見もしないで「ああ、きれいになったな」と言います。

私が実家に帰るたびに母が昼食に親戚を招きます。私は毎回「呼ばなくていい」と言っていますが、意味はありません。「呼ばないでくれ」とお願いしても同じです。ちょっとした御馳走を作り、私が揚げ物を担当します。母に「揚げ物なんてできるの?」と聞かれます。何度もやっているのに。集まった親戚も私が料理をしたことに驚いています。前も食べていたのに。

いつもの質問攻めと世間話、的外れな気遣いを交わしていると、あっという間にお客の帰る時間です。ほとんど皆が年寄りなので、順々に私が車で送っていきます。到着すると家の中に招き入れられそうになりますが、それを断るのもいつものことです。

皆を送ってから帰ると、家の中はとても静かで、聞こえるのは両親がつけているテレビの音だけです。私は家じゅうの窓を開け放ちます。古くなった家の澱んだ空気とともに、人々がそこにいた気配を吹き流したいのです。港から船の汽笛が聞こえてきます。海の方を見ると、子どもの頃に毎日眺めていた風景が、幾度となく見たような夕陽に照らされています。街は変化しても海の景色はほとんど変わりません。しかし、私はすっかり変わってしまいました。

これから両親とどうしていけば良いのか、それはよくわかりません。私が勝手に生きてきたツケが回ってきたのでしょう。私の提案を両親は素直に受け入れてくれそうにはありません。この人たちの居場所はここで、私の居場所はここではないのです。なるようにしかなりません。ただ、掃除をしながら、料理をしながら、海を眺めながら、姉と両親に詫びています。どれもこれも私に期待されていないことばかりです。それでも、帰省するたびに、いつまで続くかわからないこんなことを繰り返しています。


色々あって長い間ブログを放置し、はてなの利用からも離れていました。今後少しずつまた使い始めようと思います。


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