今日は私がもう10年以上繰り返し聞いているバンドSublime(サブライム)について。
1996年、フロントマンのブラッドリー・ノウェル( Bradley Nowell)が亡くなったことで突然バンド生命の終わりも迎えたSublimeですが、長い時を経てもなお多くのリスナーに愛されています。ただ、海外ではそれなりに(あくまでも「それなり」レベルだという気もする)知られている一方、日本での知名度はあまり高くない気がします。
そこで今日は「Sublimeを聴いてみて!」という想いを込めて紹介してみたいと思います。
Sublimeと私の出逢い
私がSublimeを知ったのは2005年。当時日本でもかなり売れていたジャック・ジョンソン(Jack Johnson)を私もよく聞いていたのですが、彼がカバーしていたSublimeの曲、"Badfish"に触れたのがきっかけでした。
こちらがSublimeオリジナル。
そして、ネットで調べていくうちに、Sublimeの曲の中で最もメジャーな"Santeria"に出逢います。確か当時はYoutubeが今ほど当たり前にはなっておらず、ネットのCD通販サイトでほんの十数秒の視聴をしただけだったはず。
"Santeria"の歌い出しの歌詞がこれ(訳は適当な意訳)。
I don't practice Santeria I ain't got no crystal ball
I had a million dollars but I'd, I'd spend it all
I could find that Heina and that Sancho that she's found
I'd pop a cap in Sancho and I'd slap her down(訳)
俺は呪いの稽古なんてしねえし 水晶玉だっていらねえ
大金持ってたのに使っちまった
あのアバズレ女とクソ男を見つけたら
あのクソ野郎に一発撃ち込んで あの女ははり倒してやる
なんかヤバイですね。でもそのうち、
I feel the break,
feel the break,
feel the break and I got to live it out,
oh yeah well I swear that I
what I really want to know, my baby
What I really want to say I can't define,
Got love make it go,
My soul will have to(訳)
ダメになりそうだ
壊れちまう
まいっちまった でも生き抜かなきゃ
ああ俺は誓うよ
ベイビー 俺が本当に知りたいのは
俺が本当に言いたいのはさ
うまく言えねえけど
愛したいんだよ
俺の魂は…
なんて言い出してしおらしい感じですが、でもこれはこれでかえってヤバイ。
女に逃げられ、怒り狂ったり、しょんぼりしたり、まだなんとかなるはずだと愛を叫んだり、まあありがちなシチュエーション、しかも粗暴な感じなんですが、それがストレートにうまく表現されています。
スカ調の、緩くて、いい加減なようで、それでいて美しいサウンドと、ヴォーカルブラッドリーの哀愁のある歌声がすっかり気に入り、速攻でSanteriaの収録されているCD"Sublime"を買いました。
でも、最初は正直Santeria以外の曲ははピンと来ませんでした。何となくどの曲も完成度が低く粗削りな感じで、はまり切らない感じ。たぶん、多くの人もそうなのかも知れない…。ところが私は何度か聞いているうちに、"Santeria"以外の曲に自分が乗せられていることに気付きました。
例えばこの"What I Got"。
歌い出しの歌詞はこんな感じ。
Early in the morning, risin' to the street
Light me up that cigarette and I strap shoes on my feet
Got to find a reason, a reason things went wrong
Got to find a reason why my money's all goneI got a dalmatian, and I can still get high
I can play the guitar like a mother fucking riot(訳)
朝早く 通りに出て
煙草に火をつけ 靴紐をかたく結ぶ
ワケを見つけなきゃな どこで間違っちまったか
なんで金を使い果たしちまったか俺にはダルメシアンがいるし まだハイにもなれる
馬鹿みてえに暴れてギターも弾ける
好きです。
なんか好きだなあ、いや結構好きだなあ、いや大好きだなあ、と気づいて、はまってしまいました。そして次々とアルバムを購入(といってもスタジオアルバムは3枚しかリリースされていません)。
Sublimeとは
ずっと変わらぬメンバー
メンバーは結成から解散までずっとこの3人です。
名前 | 担当 | 生年月日 |
---|---|---|
Bradley Nowell(ブラッドリー・ノエル) | ボーカル・ギター | 1968.2.22 ~ 1996.5.25 |
Eric Wilson(エリック・ウィルソン) | ベース | 1970.2.21 ~ |
Bud Gaugh(バド・ゴウ) | ドラム | 1967.10.2 ~ |
LOU DOG(ルードッグ) | 犬・マスコット | 1989.11.25 ~ 2001.9.17 |
順調なキャリアと突然の終わり
※この辺の情報はオフィシャルサイトや英語版Wikipediaの情報なども参考にして書いています。
Sublime: Celebrating 30 Years
Sublime (band) - Wikipedia
エリック・ウィルソンとバド・ゴウの2人は、ロングビーチで近所の幼馴染。バドはエリックの父親にドラムを教わっていました。バドとエリックは高校時代からバンド活動をしていましたが、1988年、カリフォルニア大学を中退したばかりのブラッドリー・ノエルがバンドに加わり、その後ずっとスリーピースバンドとして活動をします。
エリックとバドは主にバンクロックを聞いていましたが、ブラッドリーは大のスカ、レゲエ好きで、二人にこれらの音楽を紹介します。この3人の音楽的志向がミックスしていくことによって、独特のSublimeミュージックが出来上がっていきました。
1988年に最初のギグを行ったバンドは、クラブやビーチでのライブを行いながら、1989年には自分たちのインディーズレーベル、Skunk Records(スカンクレコード)を立ち上げ、1992年にはファーストアルバム"40 Oz. To Freedom"をリリース、1994年にはセカンドアルバム"Robbin' The Hood"をリリースし、いずれも順調なセールスを記録しました。
また、この間の1990年には、ブラッドリーがシェルターから引き取ったダルメシアンの子犬LOU DOG(ルードッグ)もバンドに加わりました。ルードッグはバンドに帯同し、時にはライブ中ステージ上に上がって演奏するメンバーのまわりをうろつくこともしばしばありました。また、歌詞の中にもPVにも登場、あるいはその吠える声が曲の中に使われていたりもします。とにかくブラッドリーと大の仲良し。他のメンバーとも。
ライブ活動を続けることでファンも増え、アルバムセールスも順調だったSublimeは、1996年メジャーレーベルからのデビューが決まります。しかし、そのメジャーデビューアルバム"Sublime"のリリースを1ヶ月後に控えた1996年5月25日、ブラッドリーはオーバードーズ(過剰服薬)によって突然亡くなってしまいました。ブラッドリーはその一週間前、トロイ・ノウェル・ホームスと結婚したばかりでした。
ブラッドリーの死によってバンドは活動停止、しかしリリースされた"Sublime"は爆発的なヒットを記録し、今日までにSublimeのアルバムセールスは全世界で1700万枚に達しています。
ブラッドリーの死後
ブラッドリーが亡くなった後、エリックとバドはLong Beach Dub All-Stars(ロング・ビーチ・ダブ・オールスターズ)などいくつかのバンドで活動を続けた後、2009年には新たなボーカルRome Ramirez(ローム・ラミレス)を迎えてSublimeを再結成します。しかし、ブラッドリーの遺族からの異議で裁判と話し合いの結果、バンド名はSublime with Rome(サブライム・ウイズ・ローム)の名称に変更となりました。そしてブラッドリーの未亡人トロイは、Rome(ローム)を素晴らしいシンガーだと賞賛しており、Sublime with Romeの前途を祝福しました。
しかし、その2年後にはドラマーのバドがバンドを脱退。Sublime with RomeにおけるSublimeのオリジナルメンバーはベースのエリック・ウイルソンのみとなりました。
ロームは非常に美しい歌声の持ち主で彼独特の持ち味・才能があります。しかし、オリジナルのサブライムファンにとって、Sublimeのボーカルはブラッドリー・ノエルただ一人。SublimeのファンがそのままSublime with Romeを支持するには至っていないようです。
多様な音楽性と独特のユルさ
ここについては多分に私の主観になってしまいますが…
サブライムは、スカ・パンク・バンドと紹介されることが多いのですが、それに収まらない多様な音楽性を有しています。スカ、レゲエ、ダブ、ロック、バンク、ヒップホップ、ダンスホール、サーフミュージックなど、様々な音楽のエッセンスを取り入れ、また曲によってその濃淡は異なります。ミクスチャーのはしりのようにも言われますし確かにそうですが、それも何か違う気がします。
どちらかというと、何かの先入観に囚われることなく、自分たちの好きな様々な音楽から得られるインスピレーションを、その時の気分でそのまま曲にしたもの、計算ではない何か、を感じます。それだけに、曲の完成度がイマイチのものもあるし、粗削りで盛り込み過ぎてまとまりがなかったり、逆にスカスカに感じる部分もあるのですが、その「好きなようにやる」という感じこそがサブライムの音楽の一番良いところなのではないか、と思います。
数少ないライブ映像などを見ても、常に気負いがなく、その場の雰囲気で自由にやる、という空気がひしひしと伝わってきます。レコーディングされたCDにもその雰囲気は残っています。ライブ映像だとメンバーはほとんど上半身裸。髭も剃らず、曲への乗り方もテキトー。私が初めて"Sublime"を聞いた時に感じたある種の「汚さ」(悪い言葉ですが褒め言葉です)、しっくりこない感じというのは、その空気に自分がいきなり入っていけなかったからなのかな、とも思います。でも、馴染んでくるとそれがたまらなくいい(馴染む前に離れてしまう人もいるでしょうけど…)。歌詞もシリアスなテーマを歌っているものがあったり、ユルユルだったり。
その自由さは、カバー曲の選択にも表れていて、レゲエ色の強いものからパンク色の強いもの、その他色々です。
レゲエバンドThe Toyesの"Smoke Two Joints"をカバーしたこの曲も
パンクロックバンドBad Religionの"We're Only Gonna Die From Our Own Arrogance"をカバーしたこの曲も
素晴らしい(と私は思う)。
10年近く前、肉体的にも精神的にも仕事がかなりきつかった中で、通勤時、休憩中など"We're Only Gonna Die From Our Own Arrogance"をヘビロテして何度聞いたかわからないぐらいです。孤独な気持ちの中、気持ちを高揚させ、奥歯を噛んで、向かっていく感じ。
一方、この"5446 That's My Number/Ball And Chain"は、途中にエロい声とか入っているけど、最後の方で盛り上がっていく感じが好き。
この"Pool Shark"でのブラッドリーの哀しい歌声も好き。
Sublimeは様々なアーティストに影響を与え愛されてきたバンドで、2005年にはノー・ダウト、ジャックジョンソン、ペニー・ワイズ等多数のアーティスが参加したトリビュートアルバムもリリースされています。
a Tribute to sublime (初回生産限定盤)
最後に
私の一番好きなアルバムは"40 Oz. To Freedom"。Sublimeのエッセンスが十二分に詰まっているアルバムだと思います。
最初に入門として買うなら"sublime"がおススメです。その後気に入ったら"40 Oz. To Freedom"に行く感じかなと思います。
そしてはまってしまったら、こんなのを聴いても良いと思います。
ちなみに、私はBud Gaugh(バド・ゴウ)が叩くドラムが好き。何とも言えないグルーブと乾いた音、結構難しいことをやってる時もバンドの"ユルさ"を維持している感じがなかなか得難い感じじゃないのかなあ、と思います。日本では全然知名度もなく、情報も少ないんですけどね。好きです。
残念ながらバンドのリアルタイムは知りませんし、もう10年以上前に知ったバンドなのですが、今も何度も何度も聴いています。何度も、ああブラッドリーが生きていてくれたらどんな曲を聴かせてくれたんだろう、と何度も夢想しましたがそれは叶わぬこと。でも残された曲だけでも私には十分です。きっとこの先もずっとずっと聴き続けるだろうと思います。
というわけで、はまる人ははまるかも知れない、はまんない人にはピンと来ないかも知れないけれど、個人的にはかなり大好きなSublime(サブライム)の紹介でした。
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