45 For Trash

しごうするのか、されるのか。

SMAP生放送謝罪で見せつけられた屈服するアイドルとメディア

1月18日のSMAP×SMAPで、今回の解散騒動に関し、SMAPメンバーが生放送で謝罪しました。瞬間最高視聴率は36%*1だったそうです。日本中がこの話題で持ち切りになり、テレビでもネットでもこの話題を見ないで済ませることは出来ないほどです。

先日、この騒動に関連して記事を書きました。思っていたよりも早く騒動を収束させる動きがありましたが、その内容に非常に残念な気持ちになりましたので、改めて記事を書きます。

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Photo credit: Leyram Odacrem via Visualhunt / CC BY

SMAP×SMAP生放送謝罪会見

会見からわかること

会見の内容からすると、

* SMAPは解散せず存続する。
* 木村拓哉さん以外の4人のメンバーもジャニーズ事務所に残留する。
* 独立しようとしたメンバーからジャニーさん(達)への謝罪がなされた。
* この解決は残留派の木村さんが仲介した。

という説明内容でした。

ファンからすれば解散が回避されることは喜ばしいことなのかも知れません。実際、安心したという声は聞かれますし、それは純粋なファン心理なのだと思います。

しかし、「解散しそうだったアイドルグループが解散しないことになった」それだけでは済まないただならぬ雰囲気が今回の騒動にはあります。

すべてはジャニーズ事務所の意向

説明・謝罪はメンバーではなく事務所の言葉

生放送での5人のメンバーの発言内容やその表情等については、あちこちに書かれているのでここでは改めて書きません。発言内容や表情等について様々な深読みもされていますが、どう見ても彼らが「自分自身の言葉」で説明したものだとは思えません。

通常の番組の中に、緊急の生放送時間を設けてメンバーが発言する以上、彼らの発言内容等は全てジャニーズ事務所が作成あるいは少なくとも了承した上でのものであるはずです。つまり、SMAPメンバーの口をから発せられた言葉は、ジャニーズ事務所から発せられた言葉そのものだと言うこともできると思います。

解散に関する騒動であれ、ファンに夢を届ける仕事であるアイドルが、あのような沈痛な表情の会見を行う必要があったのかどうか自体に疑問を禁じ得ないところもあり、多くの視聴者がその内容に何がしかの違和感を感じたのではないかと思います。また、事実ネット上では、おそらく事務所側が意図したであろう効果とは全く反するような反応が多く見られます。

一部を除き、テレビをはじめとする多くのメディアは言及しませんが、今回の生放送謝罪が事務所の意向通りの内容であっても、いや意向通りであったからこそ、ジャニーズ事務所への強い違和感、反発、悪感情を視聴者に与えたことは確実だと思います。これらの違和感はなんなのでしょうか。

夢よりも支配力の誇示が優先された

この会見については、木村さんと他の4人のメンバーの表情の違いや、発言の順番、立ち位置、ネクタイの色の違いなどまで話題にされていますが、やはり最も注目すべきは、草彅さんが語った「ジャニーさんに謝る機会を木村君がつくってくれて、今僕らはここに立てています。」というセリフでしょう。

このセリフを誰が語ったかには特別な意味はないと思います。この状況の下で事務所の了承なしに生放送で語れることなどないですし、事務所が台本を書いている可能性の方が高いと思われるからです。しかしこのセリフは誰が語るにしても無くてはならなかったのだと思います。

彼らの語った言葉は、表面上ファンに向けられていますし、彼ら自身の中にファンに語りかけたい気持ちはあるのも事実なのだろうと思います。しかし、草彅さんのセリフに象徴されるように、この会見全体はいわゆる「ケジメ」のためのものであり、誰に対してのケジメなのかというとそれはジャニーズ事務所、ジャニーさん一族です。

所属事務所の社長への謝罪について生放送で言及させられることは、夢を発信するはずのアイドルにとってあり得べきものなのか疑問に感じざるを得ませんが、それだけにジャニーズ事務所側からすれば、この部分こそ欠かせない内容であったのだと思われます。

つまり、芸能界においてジャニーさん一族の支配に歯向かうことはSMAPと言えども許されないという事実を生放送の電波に乗せて発信することの方を、アイドルの持つ「夢」「かっこよさ」「楽しさ」のイメージよりも事務所側は優先したのだと言えます。

常識的に考えれば、これまで事務所に貢献してきた国民的アイドルのイメージを壊すようなことを事務所がしたいと思うとは思えません。しかし、今回は事務所側にとってそれよりも重要なことがあったということです。

アイドル達への強力な支配力、また、事務所を離脱しても逃れられない芸能界全体への支配力、これらのものは多くの人が感じてきたことでしょうが、これほどまでに明確に見せつけられる演出が今まであったでしょうか。

事務所はこのような印象を視聴者に与えることを想定していなかったのか、それともそれを想定してもなおこのような会見をさせるべきと考えたのか、それはわかりません。しかし、今回の生放送謝罪会見を通じて、ジャニーズ事務所に対する印象を悪くしてしまった人は少なくないのではないかと思います。

中には、自分が置かれているサラリーマン社会のやりきれない現実や、津々浦々に残る既存権力による支配を想起して、不愉快になった人も少なからずいたと思います。

メディアも支配の傘下あるいは支配の加担者

今朝のワイドショーは、SMAP×SMAPでの生放送謝罪の話題に多くの時間を割いていました。スポーツ紙の一面もこの話題一色です。

しかし、多くのメディアは、木村さんの仲介で解散が回避された、良かった、というスタンスで報じているように見えます。会見への違和感を表明するようなコメントはほとんどありません。芸能レポーターたちも、奥歯にものが挟まったような言い方で通りいっぺんの解説をしています。少なくともジャニーズ事務所側のあり方について批判的な言説は皆無と言っても良いほどです。

あの生放送謝罪を虚心に見て、何らの違和感を感じない人はほとんどいないのではないでしょうか。なぜアイドルがあのような会見をし、あのような表情で、あのようなセリフを全国に向けて発しなければならなかったのか、そこに特別な支配従属の関係を想起する人は少なくないはずです。しかし、主要なメディアはそれを取り上げようとしない。

それは、メディアもまた特定の支配力の下にあるか、あるいはその支配を加担・補完する役割を担っているからではないでしょうか。

たまたま見たフジテレビの「とくダネ!」で、やまもといちろう氏が、そもそもあの謝罪は誰に向けられていたのかという疑問や、「公開処刑気味」、背景の複雑な事情などと発言をされていましたが、これが一番本質に近い言及だとは思ったものの、それ以上具体的な話には拡がっていきませんでした。

しかし、多くの視聴者がモヤモヤしているのは、解散を心配するだけではなく、長年の実績ある国民的アイドルグループでさえ自らの意思で道を選べないような業界の現実が厳然とあることについてであり、そういう意味ではメディアは、視聴者・読者の期待にまったく応えていないと言えます。視聴者・読者の望むものよりも、業界内の事情、支配・権力の意向を優先しているのです。

これらは全て今までもわかりきっていたことかも知れません。しかし、これほどまでにわかりやすく見せつけられることもまた珍しいことだと思います。

まとめ

SMAPの生放送謝罪から何を受け取るべきでしょうか。

ファンの人々は、SMAPの今後の活動がどうなるのかだけを固唾を飲んで見守っているだけで良いのでしょうか。

アイドルは夢を見させてくれる存在です。しかし、普段は感じなくても済む彼らの現実、薄々感じていても見過ごしていた事実が、これほどまでに明示的に示された以上、本当にこれをこのまま放置していて良いのでしょうか。

それぞれ高収入を得ている個人事業主の契約の問題に過ぎないのだから放っておけば良いのでしょうか。彼らの後ろにはまだたくさんのアイドルやアイドルの卵がいます。

言わずもがなのことを言っているに過ぎないのかも知れません。しかし、メディアで見せられるものが、特定の力によって決められているとしたら、我々はそれを黙って見せられているだけで良いのでしょうか。この状態が続いていくことに私は強い疑問や不安を感じます。

他にこんな記事も書きました。↓
www.shigo45.com

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*1:今朝の速報値なので変動の可能性はあります。参考としてご覧ください。

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