45 For Trash

しごうするのか、されるのか。

白人至上主義者を中枢に置くトランプ政権の軍隊が日本に駐留している【追記あり】

今私の中にあるこの感覚をどのように表現すれば良いのか、いつになくわからない。アメリカで起こっていることについてである。

しかし、トランプ政権にまつわるあれこれについて論評したいわけではない。私が今日書きたいのは、トランプ政権が日本人に直接与えるかも知れない影響、いや影響以上のものである。

私に未来を予測する能力はない。専門的に政治や国際関係を勉強したわけでもない。さらに私の認知になんらかのバイアスが働いていることも否定できない。今感じているこの不安は、私個人の中で培われた価値観によって強い影響も受けているだろう。

だから、今日のエントリーは、単なる先走った妄想、杞憂、ヨタ話として読んでもらっても構わない。また、そういうエントリーの性質上、引用する資料等についてあまり吟味もしていない。

※ かなりの殴り書きなのでいつもの「ですます調」ではありません。ご了承ください。

f:id:shigo45:20170131161655j:plain
Photo via Visual hunt

白人至上主義者バノン氏がトランプ政権の中枢に

トランプ政権誕生からまだ10日程しか経っていないが、これまでの政策を大幅に変更する大統領令に次々と署名し、アメリカ国民のみならず世界中の人々に混乱と影響を与えている。そのひとつひとつを挙げればそれだけでたくさんのことが書けるだろうが、それは今日の目的ではない。

私が注目したのは次のニュースである。

www.newsweekjapan.jp

バノンは、安全保障の最高意思決定機関である米国家安全保障会議(NSC)で閣僚級委員会の常任メンバーに引き上げられた。

トランプ政権の黒幕で白人至上主義のバノンが大統領令で国防の中枢に | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

スティーブン・バノン氏は、自らが会長を務めていた右派ニュースサイト「ブライトバート・ニュース・ネットワーク」を通じてオルタナ右翼(オルト・ライト)の世論を主導し、大統領選挙ではトランプ陣営の最高責任者を務めた人物である。政権発足後は大統領上級顧問兼首席戦略官に起用され、トランプ氏の側近中の側近として取り立てられている。

バノン氏はその政治スタンスが極右というだけではく、白人至上主義者であり女性差別主義者だと言われている。実際、有色人種や移民への嫌悪、女性差別や陰謀論を拡めることを通じてブライトバートを人気のニュースサイトに育て上げ、本人も悪意に満ちた論調で有名だった。最近では、政権に批判的なメディアに対して「メディアは恥ずかしい思いをし、屈辱を与えられるべきだ。黙ってしばらく聞いていろ」「メディアは黙って聞いていろ」 トランプ大統領の側近:朝日新聞デジタル)という発言でも注目を浴びた。

本人の人格云々は置いておくとしても、筋金入りの差別主義者であり、白人至上主義者であり、それを全く隠さないヘイトスピーカーであることは間違いない。もちろん人権への無理解や敵視も。

そのバノン氏がアメリカ国防の中枢に正式に食い込んだわけである。

そして激しい混乱や反発を生んでいる大統領就任後の大統領令もバノン氏主導で立案されたものとされている。

しかもそれだけではない。

代わりに情報機関を統括する国家情報長官や、米軍のトップである統合参謀本部議長を常任から非常任に格下げした。

トランプ政権の黒幕で白人至上主義のバノンが大統領令で国防の中枢に | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

バノン氏をプリンシパル委員会の常任とし、軍・情報機関のトップを非常任に格下げするということは、何を意味するのであろうか。もちろん、非常任となった彼らはその専門知識に関わる懸案事項については出席できるが、常にトランプ氏に情報を提供し意見を述べることができるわけではない。一方でバノン氏は常に委員会に出席する。これは軍服組トップからの、情報機関トップからの意見よりも、バノン氏の意見を優先するということではないのか。

もう少し長期的には、彼らを非常任とし、バノン氏を常任とすることは、他でも重用されているバノン氏の軍や情報機関への影響力を強めていこうという考えなのではないか。

民主主義社会における権力を支えるものは一方では民意ではある。しかし、究極的には軍事力等の物理的な力であり、また今日においては情報力でもある。これらを掌握するトップをバノン氏と同等とするどころか下位に置くことにしたように見える。トランプは、いやバノンは、軍や情報当局を完全に掌握したいという野望を持っている可能性もある。アメリカの権力機構の中でそれはそう簡単なことではないかも知れないが、一方で所詮は人間の作ったシステムだとも言える。

繰り返すが大統領令はバノン氏主導で立案されており、NSC改革の大統領令もそうであろう。また、そもそも大統領選挙中のポピュリスト的な政策に関する発言や差別的発言等もバノン氏がその台本を書いたのだと言われている。

そのため、アメリカでは「バノン大統領」という言葉まで出てくるほどになっているようだが、それも頷ける。

国家安全保障会議(NSC)は、米国の安全保障に関わる内政、外交、軍事問題を協議し、そのプリンシパル委員会はごく限られた人物にしか参加資格はない。

軍服組や情報機関が不在の場で、白人至上主義者のバノン氏は伸び伸びと仕事をすることになる*1

在日米軍・アジア太平洋の米軍・自衛隊

これを前提に、今度は日本に駐留する米軍の話である。

私は軍事について明るいわけでもないので、米軍や自衛隊の戦力の評価を正しくはできない。一応平成28年版防衛白書の該当部分へのリンクをはっておく。

防衛省・自衛隊|平成28年版防衛白書|第2節 アジア太平洋地域の安全保障環境
(図表I-1-2-1 わが国周辺における主な兵力の状況(概数)へのアンカーリンク)

防衛省・自衛隊|平成28年版防衛白書|2 軍事態勢
(図表I-2-1-4 米軍の配備状況及びアジア太平洋地域における米軍の最近の動向)

尚、2013年末時点で外務省が公表している在日米軍の戦力状況と上の資料の整合性についても私には判断はできないが、リンクをはっておく。

参考資料5:在日米軍主要部隊・戦力展開状況(2013年末時点)
(外務省資料PDFへのリンク)

資料を見るまでもなく、ご承知の通り、日本領土内には多数の米軍が駐留している。それはもちろん日米安全保障条約によるものである。

沖縄における米軍基地の問題をはじめ、米軍基地の存在を巡る多数の問題を日本は抱えている。そして、その問題への対応に関する日米両政府の関係性についても様々な意見はあるだろう。地位協定の中身についても。ただ、今回のエントリーでは直接そのことについては極力触れない*2

この状態をアメリカで今起こっている変化との関係で考えてみる。

自由と民主主義の国アメリカ

実質的な保障の程度に議論はあるにせよ、日本は建前上、個人の尊厳や基本的人権を重んじる民主主義国家である。その日本に駐留し軍隊を展開するアメリカもまた自由と民主主義の国であり、日本にとってはその「先輩」国家でもあると言ってもよい。

もちろん、アメリカがGHQを通じて日本を民主化したプロセスや、その動機、日米安保に対する本音や、アメリカ政府の日本政府への振る舞い方については議論があるだろう。場合によっては日米安保の存在自体に対して疑義をはさむ立場や、日本の主権の対外的独立性を問題にする立場もあるだろう。

ただ、積極的に日米安保を強固にすべきだと考える立場であれ、これを破棄すべきであるとする考えであれ、多くの人は、少なくともアメリカ国内においては、アメリカは自由と民主主義の国であり、人間の尊厳や基本的人権を尊重する建前を保持した国だと考えてきたはずである。

もちろん、建前と実態の齟齬はどこにでもある。また、日米の国益が衝突する場面では実態として建前が背後に押しやられる場面があることも多くの人は知っているだろう。

しかし、最低でもその「建前」が通用する共通の言葉を持った相手だという風に思ってきたのではないかと思う。

ところがその「建前」が通用しないかも知れない政権がアメリカで誕生した。現在見えているものだけでも、移民の排斥、科学的事実の唾棄、女性への蔑視やマイノリティの人権軽視、そして何よりも人種差別主義的価値観が跋扈し始めている。

この政権によってアメリカが「建前」ででも大切にしてきた価値が踏みにじられ続けるのか、それとも日本よりも長くまた公民権運動等の歴史を経てきたアメリカの民主主義がその「建前」を取り戻すことが出来るのかは予想がつかない。ただ、早急に事態を進行させていこうとするトランプ政権の動きにアメリカ国民が対応しきれるのか、また議会が大統領との緊張関係を作ることができるのか、あまり楽観的に見ることはできない

アメリカは、いや少なくともアメリカ人の多くは、日本人にとって良き隣人であった。そしてその根底には、自由や人権に対する考え方への一定の信頼感があった。アメリカ人に抱くこの信頼は、今もまだ生きている。

正直に告白すれば、私はアメリカ人の中に好ましく思う人もいるし、アメリカという国に魅力を感じては来たけれど、こと国家間の出来事についてはアメリカに反感を持つことも少なくなかった。同盟の名の下に日本に犠牲を強い続けるアメリカの態度に怒りを感じることもある*3「国家」としてのアメリカに限定して言えば、好ましく思っていない部分が私の中にはある。

それでも今、「国家」としてのアメリカに対しても、何がしかの信頼を自分が持っていたことに気づく。私のようにアメリカに怒りを感じることがほとんどない人からすれば、もっと強くアメリカを信頼してきたのだろうと推測する。

その信頼が揺らごうとしている。白人至上主義政権によって。

白人至上主義、人種差別主義が生むもの

トランプが大統領が誕生するまで、そして誕生後も、アメリカではヘイトクライムが目に見えて増えたと言われる。特にトランプやバノンがターゲットとすることの多かったイスラムやヒスパニック系の人々への嫌がらせ、ヘイトスピーチ、犯罪が多発している。

www.huffingtonpost.jp

www.huffingtonpost.jp

これらの事態を見てもなお、怒りや不快感を感じなかったり、自業自得だというような人が、日本人の中にもいるかも知れない。ただ、対岸の火事であり、自分がヘイトの対象となっていないから、そう言っていられるのかも知れない。

しかし、白人至上主義、人種差別主義は、日本人を当然差別する。例を挙げる必要もないだろうが、トランプ氏の選挙期間中の発言の中にもそれは見受けられる。

www.huffingtonpost.jp

大統領選の選挙運動でトランプ氏は、「自分が(第二次大戦の)当時にいたら、日系アメリカ人収容を支持していたかもしれない」と発言している。トランプ氏は2015年12月、タイム誌に発言の真意を「正しく答えるとすると、その時、その場にいたらそうしなければならなかっただろう」と話した。「私はそうした考えは嫌いだが、正しく答えるには、その時、その場にいたらそうしなければならなかっただろう」

「イスラム教徒の入国管理には、戦時中の日系人強制収容が前例になる」トランプ氏支持者が発言

太平洋戦争中、12万人もの日系アメリカ人が強制収容所に送り込まれていたが、これは人種偏見に基づく過ちだったとしてレーガン大統領時代にアメリカ政府は公式に謝罪を発表している。トランプはその考えを否定したというわけだ。

選挙キャンペーン中に日本人がヘイトの対象として頻繁に挙げられることがなかったのは、単にキャンペーンに効果的なわかりやすい敵ではなかっただけだろう。

白人至上主義の下では、当然日本人は白人よりも下位の人種だとみなされる。ただかつての南アフリカにあったアパルトヘイトの下では、日本人は「名誉白人」として扱われていたが。

(前略) 南アフリカ共和国で行われていたアパルトヘイトの下では、外国人を含めて、有色人種は総じて差別的な扱いを受けてきた。ただしインド系人種や白人との混血の者は議会の議席など、黒人には認められない一定の権利が認められ、有色人種の中でも待遇の違いがあった。 日本の国籍を有する者は、1961年1月19日から、経済上の都合から「名誉白人」扱いとされていた。欧米諸国がアパルトヘイトを続ける南アフリカとの経済関係を人道的理由により縮小する一方で、日本は1980年代後半から南アフリカ共和国の最大の貿易相手国になる。 (中略) 1987年、国際社会がアパルトヘイトに反対して、文化交流を禁止し、経済制裁に動くなかで、日本は逆に、南アフリカの最大の貿易相手国(ドルベースの貿易額基準)となり、翌1988年2月5日に国連反アパルトヘイト特別委員会のガルバ委員長はこれに遺憾の意を表明した(ガルバ声明)。アパルトヘイトに対する国際的な非難と世界的な経済制裁が強まる中、南アフリカとの経済的交流を積極的に続ける日本の姿勢もまた批判の対象となり、1988年に国連総会で採択された「南アフリカ制裁決議案」の中で、日本は名指しで非難された。 (以下略)

名誉人種 - Wikipedia※下線は筆者

トランプ政権が人種差別的言動や政策を繰り返し発している中で、日本人だけがその差別から免れ、「名誉白人」になれると思う人がいるだろうか。そしてまた、万一「名誉白人」扱いをされてそれを受け入れるとすれば、それは全ての差別される人間と基本的人権への裏切り行為以外の何物でもない。

白人至上主義者は、日本に住む人間の誰彼を区別はしないだろう。政治的立場が何であろうと、民族が何であろうと関係はない。単なる極東の有色人種に過ぎない。もちろん、彼らへ阿る者は多少の特別待遇が与えられるかも知れない。しかし所詮は差別の対象である。

他国の強力な軍隊が自国領土内に駐留していること

私は駐留米軍軍人、あるいは軍属の人々が、トランプ政権の人種差別的志向に影響されて、その力を背景に我々を痛めつけに来ると言いたいわけではない。むしろ、人権や民主主義の価値を認め、まさにそのために働いていると考えている米兵が多くいて、彼ら自身がこの政権の白人至上主義に反発を感じているのではないかと想像する。実際、米兵の中には多数の有色人種がいる。

また、日米両国がこれほどまでに経済的・文化的関係を維持し続けてきたこと、両国民の間に信頼感があることを信じてもいる。そして、トランプやバノンが本当の意味で米軍全体を掌握しているとはまだ言えないのかも知れない。

しかし、トランプはアメリカ合衆国軍の最高司令官であり、バノンはトランプをコントロールしている。米軍が本当の意味で彼らが自由に使える軍と化した時、最も強力な権力維持装置としての軍隊は、政権の志向を色濃く反映しはじめるかも知れない。それがどのような振る舞いをするのかは予想できない。加えて、上に見たようにヘイトクライムの頻発が、大統領やその周囲から発信される情報に意を強くしたことの影響も無視はできない。

そして、我々日本人は、アメリカ大統領選挙に対する何らの権利も持っていないにもかかわらず、この最高司令官の指揮下にある米軍の駐留を認め続けなければいけない。もしアメリカが今までのアメリカとは違う国家に変わってしまったとしても、簡単に「出て行ってください」とは言えない。アメリカが自主的に出ていってくれない限り、日本人の意思は事実上問題にならない*4

もちろん、トランプと言えども友好国日本に対して軍事力を直接の背景とした振る舞いをあからさまに行うとは思えない。すぐに戦争が起きるだろうと予見しているわけでもない。しかし、この間に起こっていることを見ると、それが正常性バイアスのなせるわざなのではないか、とやはり不安を感じてしまう。少なくとも、日本はこれまで以上に卑屈に付き従うことを強制されるのではないか、それが国民の生活に暗い影を落とすのではないかと考えてしまう。

我々はどう対処すれば良いのだろうか。アメリカ国内が分断されており、多くの国民が反トランプの声を上げているとはいえ、政権支持者たちがトランプに喝采を上げた要因が解決されたわけでもない*5。他国で起こっていることが、直接自国に影響を及ぼしてしまう可能性を指をくわえて見ているしかないのだろうか。多くの国がトランプの政策に異を唱えている中で、わが国の政府はコメントを避けている。そのことへの批評も今日はしない。だが、国民はアメリカのこの状況を評論したり、予測したり、あるいは興味本位で見ているだけで良いのだろうか。何かすべきことがあるのではないか。

このエントリーの結論を書くことは、今日時点の私にはできない。ただ、これほどまでに強力な軍隊を自国の領土内に置いている中、その軍隊を無邪気に自分たちの味方、あるいは最低でも「話の通じる」相手だと信じ続けて良いものなのかどうか、私はこれまでになく不安に思っている。

ここに書き連ねたことが杞憂、私の単なる妄想だと笑われるならその方が良いと思う。わかりもしない未来を想像して危機感を述べることは有害かも知れない。また逆にトランプが大統領選で勢いを増してきた時に感じた不安と繋がっていて、改めて書くほどのことではないのかも知れない。

ただ、冒頭の記事に接した瞬間に私の中に即座に浮かんだどす黒い不安を、ここに吐き出しておく。

※ あまりまとまりのない文章になったことをお詫びします。

追記(2017.1.31 22:45)

私はこのエントリーを出来るだけ問題提起するだけの内容にしようと試みました。しかし、そうもいかない場合もあるようなので念のため追記をします。面倒くさければ読まなくてもいいです。問題提起がそもそもの目的だったので、あくまでも蛇足です。

また、最低限、人権や民主主義の価値を認めることが議論の前提になっていることを最初に書いておきます。

私は、日本は日本独自のスタンスで外交・防衛努力をすべきだと考えています。アメリカなのか、中国なのか、ロシアなのか、誰の味方につくのか、誰に味方になってもらうのか、という選択的な思考だけではなく、日本国民の意思と日本独自の力で、自らの支持する価値観と国益に従って防衛・外交を行っていくべきだという選択肢も考える必要があるのではないか、と考えています。

中国やロシアのように、民主主義や人権に対する考えについて全く相容れない国と軍事同盟を結ぶなど考える余地はありません。そして、こういった選択肢になりえない国にもしかしたらアメリカがなるかも知れない、という恐れがこのエントリーを書いた動機になっています。もちろん、それは先にも書いたように、妄想、杞憂、ヨタ話なのかも知れませんが。

もちろん、どのような国ともできるだけの友好関係を築き、合意して進められる関係は進めていくべきでしょう。それは全ての価値観が一致できなくてもです。それは今でもアメリカや欧米以外の国ともやっていることです。しかし、全面的に依存したり従ったりする関係は、日本の国益を考えた行動を日本国民の意思のみで決めれなくなってしまう、そういう事態を心配しているのです。

このような考えについては、この厳しい国際関係や極東の情勢を考えれば、理想主義的であるとか、夢想家であるとか、そういうそしりを受ける可能性はあるでしょう。むしろほとんどの人がそう思うのではないかとも思います。現実の国際関係の中では、どこかの陣営に入り、緊張と対抗関係の中で生きていくしかない、との考えもあるでしょう。私自身もそんなに簡単なことではないと思いますし、絶対的な確信を持っているとまでは言えないところもあります。

難しい問題もあります。例えば、日本が独自に軍事的な防衛を行うなら、日本国憲法、特に9条との関係が問題になるでしょう。では改憲すべきかといえば、我が国固有の軍隊を持つことを明言し軍備を増強したとしても、現状の下では強力な米軍が駐留している状況の中で、日本の軍隊が米軍の意向に反した行動を取ることはできないのではないかと思います。つまり独自の軍隊の増強を、他国のためにではなく日本国民のために行うべきかどうか、判断できる現実的な基礎を欠いているというのが私の考えです。

日本が日本の国防について独自の判断を下し、独自に防衛を形作っていくなら、まずは日本が中立のスタンスを保持できるように、形式的ではなく実質的にも独自の判断ができるようになるしかありません。それは制度上も事実上も必要です。我々が独自の軍備を整えて国際関係に向かうのか、それともそれほど強力な軍備に頼らない国際関係の築き方を選ぶのか、またはほかの方法があるのか、それは、日本が他国に強制されない意思決定を行い、中立のスタンスの下で国際関係を結べることが前提にして議論すべきなのではないか、と私は考えています。そしてまた、その後に選択する我々の方向に必要な準備は、早めにまた迅速に整えていかなければならないと思います。いずれにしてもそうそう簡単なことではありません。そもそも日本はこれまでほとんど中立のスタンスを保って外交関係を結んだ経験はありません。ずっと日米安保の下で生きてきたからです。

ただ、もし仮にアメリカがまるで中国やロシアのように人権や民主主義を抑圧したり否定したりする国家に変貌を遂げたとしたら、今のこの状況を維持し続けることは日本にとって本当に利益になるのでしょうか。今までは予想もしなかったような未来がやってくる可能性を全否定することはできないのではないでしょうか。

日本国民の多くは日米安保条約の維持を支持していると思います。そして多くの国民はアメリカを少なくとも民主主義や人権を大事にするという「建前」を維持してきたことに信頼を置いてきたのだと思います。一方で、中国やロシアに対してはそのような信頼はない。だからこそアメリカを同盟国として支持してきたのではないでしょうか。我々を抑圧するだろう中国やロシアの傘下に入ることはできない、一方でアメリカは民主主義や人権という「建前」を少なくとも維持しようとしているからこそ、アメリカを支持してきたのではないでしょうか。

しかしアメリカは今後どうなるのか不安です。もし人権や民主主義を否定するような国に変わってしまっても、我々は日米同盟を維持し在日米軍の存在を認め続けなければいけないのか、そういうことを考えたかったし、できれば他の方にも考えて欲しかったのです。

私の妄想を前提にした議論かも知れません。一方で、トランプ政権誕生前の日米関係についてもの評価も人によって異なることでしょう。しかしその評価が異なったり対立していたとしても、もし仮に、どの国も信用することができない世界がやってきたとしたらどうするのかを真面目に考えてみても無駄ではないのではないか、と思ったのです。周囲が人権や民主主義をまともに認めない国ばかりになった時どうするのか、すぐには結論が出ないとしても、この機会に考えもっとオープンな議論がなされるべきなのではないか、というのが私の考えです。

もちろん何度も言いますが、今回のエントリーが私の先走った妄想や杞憂であれば、良いのですが。ただもし妄想だとしても、二者択一的な議論ではなく、また立場を超えてしっかりと議論をした方が良いだろう、と私は思っています。


This is a post from 45 For Trash

*1:少し前にトランプ政権を見る時、その政治手法に焦点が当たり過ぎていて、政策そのものへの評価が少し置き去りになりがちではないかという趣旨のことを書いた(下記リンク)が、否が応でも注目せざるを得なくなってきたと思う。

www.shigo45.com

*2:もちろん避けて通れない問題だが、本エントリーの本筋から外れるので仕方なく省略する。
尚、関係するエントリーとして以前下記のようなものは書いた。

www.shigo45.com

*3:もちろん日本政府に対しても。

*4:トランプはアメリカ優先主義を掲げ、選挙期間中にも米軍駐留経費の増額に応じなければ米軍を引き上げると言っていたが、米軍が日本に駐留するアメリカの利益を考えれば、その可能性はないと思う。ただ増額を飲まされるかどうかの話に私には思える。

*5:この点に多少関係ある過去のエントリーは下記のもの。

www.shigo45.com

POLICY :1. このサイトへのリンクは自由です。 2. できるだけ誤りのないように書いているつもりですが、当サイトに掲載する情報の正確性は保証できません。また掲載している情報は執筆日現在の情報です。 3. 当サイト、当サイトリンク先、広告リンク先の利用によって生じたいかなる損害についても一切の責任を負いません。 4. 当サイトはGoogleアドセンス、Amazonアソシエイト、その他アフィリエイトの広告を掲載している場合があります。 5. 当サイトご利用の場合は上記の事項に同意したものとみなします。